肌の変化は何故起こるか

美容矯正の施術をしていると、片側だけ施術したところで一度お顔を触ってもらうことがあります。
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左右差を確認してもらうために。
初回や、新しい技術の時は一度だけそうしています。
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すると、
「え、こっちだけお肌もちもちになってる!」と言われることがあります。
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まだ触っていない側はサラサラしているのに、施術した側はしっとりしていて、少し温かく感じることもある。
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化粧水や美容液をつけたわけではありません。
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では、この違いは何なのか。
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今日は少し深く、皮膚の中から考えてみたいと思います。
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◎肌の潤いを「水分量」だけで考えない
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「しっとりした=肌の水分量が増えた」
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と考えたくなるのですが、身体はそんなに単純ではありません。
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皮膚への刺激によって局所の血流や皮膚温が変化したり、発汗や皮脂の状態が変化したりすることで、触れたときの質感が変わることがあります。
フェイシャルエステでも同じ事が起こります。
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そして、ここで大切なのが皮膚の構造です。
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表皮には血管がありません。
血管が存在するのは、その下にある真皮です。
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真皮には細かな血管が網目状に広がり、
真皮乳頭付近まで毛細血管のループが伸びています。
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表皮の細胞は、その下にある組織から酸素や栄養を受け取っています。
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だから私は、肌を考えるときに「表面だけ」を見ることはほとんどありません。
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皮膚の下で何が起こっているのか。
そこを見る方が面白い。
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◎皮膚は身体を包む膜であり、巨大な感覚器でもある
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皮膚には、触覚、圧、振動、伸張、温度、痛みなどを感知するさまざまな感覚受容器や神経終末があります。
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例えば、
・ルフィニ終末
・パチニ小体
・マイスナー小体
・メルケル細胞-神経複合体
遊離神経終末など。
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私たち施術者が手で皮膚に触れたとき、
単純に「皮膚を動かしている」だけではありません。
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どの方向から触れたのか。
どの程度の圧だったのか。
どのくらいの速度だったのか。
どのくらい持続したのか。
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そういった刺激が感覚情報として神経系へ送られています。
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私はここが施術のすごく面白いところだと思っています。
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強く押せば変わるわけでもない。
たくさん揉めば変わるわけでもない。
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身体にとっては「どんな刺激が入ったのか」が大切だからです。
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◎真皮を「筋膜」とどう捉えるか
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真皮にはコラーゲン線維や弾性線維などからなる結合組織があります。
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筋膜という言葉を狭い意味で使う場合、
真皮そのものをそのまま「筋膜」と呼ぶことには注意が必要ですが、広い意味での筋膜系・結合組織の連続性として考えると、皮膚だけを完全に独立したものとして見ることもできません。
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皮膚の下には皮下組織があり、そのさらに下には筋膜や筋肉があります。
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だから施術をしていても、
「ここだけを触って、ここだけが変わった」
とは私はあまり考えていません。
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皮膚に入れた刺激が感覚入力となり、
その下の組織の滑走や張力が変化し、
さらに身体全体との関係の中で反応が起こる。
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私はそんなふうに身体や肌を見ています。
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◎リンパも皮膚のすぐ近くにある
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皮膚には血管だけではなく、リンパ管も存在します。
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組織の間にある液体の一部を回収し、
リンパ系を通して循環へ戻していく。
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つまり私たちが触っている皮膚のすぐ下では、
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血液
組織間液
リンパ
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といった「液体の動き」も存在しています。
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だから肌の質感を考えるときも、私は血流だけで説明しきろうとは思いません。
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◎そして、もうひとつ面白いのが脳脊髄液(CSF)
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ここからは少しマニアックな話です。
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脳と脊髄の周囲には、脳脊髄液、CSFと呼ばれる液体があります。
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以前は、脳脊髄液とリンパ系はかなり別々のシステムとして考えられていました。
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しかし現在では、脳やその周辺の液体が髄膜リンパ管などを介して頸部のリンパ系へつながる経路や、神経周囲の経路など、脳脊髄液とリンパ系との関係が研究されています。
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つまり、
「脳脊髄液は頭の中だけで完結している」
というほど単純ではないということです。
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頭頸部のリンパ系とのつながりがある。
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これは顔や首を扱う私たちにとって、すごく興味深い話だと思っています。
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ただし、ここは大事なところ。
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だからといって、
「美容矯正で脳脊髄液を流せば肌が潤う」
「CSFが増えたから肌が輝く」
とまでは、現在の科学からは言えません。
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ここを一緒にしてしまうと、事実と仮説が混ざってしまいます。
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でも私は施術者として、
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皮膚
血管
リンパ
神経
結合組織
脳・脊髄を取り巻く液体環境
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これらを完全にバラバラのものとして見る必要もないと思っています。
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身体の中では、それぞれが関係しながら存在しているからです。
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◎だから私は「顔だけ」を施術している感覚がない
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たるみがあるから上げる。
むくんでいるから流す。
硬いから揉む。
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もちろん、それもひとつの考え方です。
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でも17年間、人の身体に触れてきて、私はどんどんそれだけでは考えなくなりました。
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顔を触っていても首を見る。
首を触っていても胸郭を見る。
胸郭を触っていても呼吸を見る。
とかね。
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そして皮膚を触ったときには、
この皮膚の下で何が起きているんだろう?
と考える。
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片側の施術が終わったあと
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「こっちだけ、しっとりしてる」
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その小さな変化ひとつにも、
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血流や皮膚温、
神経からの感覚入力、
組織間液やリンパ、
結合組織の状態など、
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いろいろな要素が重なっている可能性があります。
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身体って、ひとつの現象に対して原因がひとつじゃないんです。
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だから面白い。
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美容矯正で私が見ているのは、
単純に「顔がどれぐらい小さくなったか」だけではありません。
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触った感じ。
温度。
左右差。
皮膚の動き。
呼吸。
身体の緊張。
施術を入れたときの反応。
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そういう小さな変化を拾いながら、
「今、この人の身体では何が起きているんだろう」
と考えています。
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肌がしっとりした。
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たったそれだけの変化でも、
その下には、私たちが想像している以上に複雑な身体の仕組みがあります。
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だから私は何年施術をしていても、
身体に飽きないんだと思います。

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